住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」

博物館の多くは、一般的に教育委員会の管轄下にあります。しかし、今回ご紹介する大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の管轄は大阪市都市整備局。「住まいと暮らし」が専門という珍しい博物館です。案内役は2001年の開館以来、館長を務める谷直樹氏。同氏は日本建築史の研究が専門で、大阪市立大学大学院教授。博物館の企画段階から参加し、展示内容に合わせた「ハコ」の設計にも関わりました。開館後は「ハコモノ」で終わらないようにと、多くの人々に来館してもらい、来館者が楽しみながら、何か新しい発見ができるようにと工夫を凝らし続けてきました。工学部建築学科の出身で学芸員の資格を持つユニークな館長が、ユニークな博物館をご案内します。
2010年8月27日

第7回 恐るべし町家衆

 

近ごろはボランティアが大はやりであるが、今昔館にも町家衆まちやしゅうと名乗るボランティアが来館者を待ち受けている。しかし町家衆の活動は、他の博物館とはかなり異なるユニークな内容である。

 

町家衆は、江戸時代の町並み(大坂町三丁目)の中で、町家の案内はもちろんのこと、南京玉すだれ、けん玉の実演、おじゃみ(お手玉)づくり、和服の着付けなど、心をこめたもてなしをしてくれる。和服に着替えた来館者も、この町の住人になりきってコマ回しや折り紙に興じる。見るだけの博物館ではなく、みんなが楽しむことで、自然に町の賑わいが生まれている。

 

のぞきからくりの屋台 南京玉すだれ
活躍する町家衆(ボランティア)たち。写真上は夏祭りで「のぞきからくり」の屋台を運営。下はご存じ南京玉すだれ

 

他館が真似のできないボランティア活動が、企画展「ディスカバリー……こんな天満みつけまし展」の主催である。天満15、は今昔館の地元。日本一長い天神橋筋商店街16と庶民的な人情が健在で、日本三大祭のひとつである天神祭17はこの地域を氏子としている。この天満地域の「お宝」を発掘して、展覧会にしようという企画である。

 

出品交渉は、営業経験のある町家衆が戦略を練った。彼らは、『大阪商工名鑑18』から老舗のリストを作成し、数ヶ月をかけて天神橋筋商店街の店を1軒1軒訪ね歩いた。その数は155軒、そのうち29軒から貴重な資料を借用することができた。私は、展覧会への出品交渉は営業活動と同じであるということを学んだ。私も含めて学芸員が資料調査を行っても、こんなに粘り強く訪問ができたものだろうかと思う。

 

天満展には14,000人以上の入館者があり、学芸員企画の展覧会より集客力があった。これは、地元に根ざした出品交渉が功を奏したからではないかと思う。「恐るべし町家衆」である。

 

(このシリーズ終わり)

 

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脚注

    1. 天満(てんま) 上町台地の大川を隔てた北の地域。江戸時代には大坂三郷の一つ天満組の地。天満宮(現在の大阪天満宮)、天満青物市場などがあった。
    2. 天神橋筋商店街(てんじんばしすじしょうてんがい)  天神橋筋は大阪市の北区を南北に縦断する街路で、南は淀川に架かる天神橋の北詰から、北は新淀川の長柄橋南詰まで、南北約3キロメートルの町筋。東側は天神橋1~8丁目、西側は南森、末広、扇町などの町に区画される。天神橋筋商店街は天神橋筋南端の天神橋1丁目から北の同6丁目(通称「天六」)まで続いており、日本一長い商店街といわれる。江戸時代を中心に繁栄した天満青物市場の伝統を継ぐとされる。大阪くらしの今昔館は、同商店街の北端、天六にある。
    3. 天神祭(てんじんまつり) 大阪天満宮、通称天満(てんま)の天神さんの夏大祭。7月24日の宵宮には、お旅所を決める鉾流神事、25日の本宮には陸渡御、船渡御などが行われる。船渡御では、御鳳輦をのせた奉安船と、それに従う供奉船、そして市民がのった奉拝船が大川を往復する。
    4.  

       

    5. 大阪商工名鑑(おおさかしょうこうめいかん)  大阪商工会議所が編集・発行。大阪市内に事業所を置く企業の資本金・従業員数などを記載。「創業年」も記されている。
    6.  

DATA

 

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」

 

●所在地
〒530-0041
大阪市北区天神橋6丁目4-20
大阪市立「住まい情報センター」8~10F
 (入口は8F)
・TEL 06-6342-1170
・FAX 06-6354-3002

 

●開館時間
午前10時~午後5時
 (入館は午後4時30分まで)

 

●休館日
毎週火曜日(祝日の場合は翌日)
祝日の翌日(日曜日、月曜日の場合は除く)
第3月曜日(祝日、振替休日の場合は、その週の水曜日)
年末年始(12/27~1/3)
※上記以外に臨時休館する場合があります。

 

●入館料
・一般600円 団体540円(20名以上)
・高校生、大学生300円 団体270円(20名以上)
※中学生以下、障害者手帳持参者、大阪市内在住の65歳以上は無料(証明書要提示)
※特別展開催期間中は別料金となります。

 

●URL  http://house.sumai.city.osaka.jp/museum/